紫外線発光素子

 波長400 nm以下の光は紫外線と呼ばれ、材料加工やセンシング、殺菌など様々な分野で応用されています。紫外線領域の光源は、水銀ランプや重水素ランプなどのガス光源が主流です。しかし前者は水銀の有害性があり、後者はガス交換が必要で加えて大型や低効率といった様々な実用上の問題があります。これらの欠点を補うために、固体の蛍光体を用いた紫外線発光素子の開発が求められています。現在、紫外線領域の固体蛍光体としてダイヤモンドやAlNなどが研究されています。しかしながら、これらの材料は発光波長がバンドギャップで制限され、200 nm程度が波長限界であるとされています。またその他にも窒化物や酸化物が研究されていますが、現状として波長200 nm以下という真空紫外線の発光を実現する材料は僅かです。本研究室では、紫外線及び真空紫外線領域での蛍光体としてより広いバンドギャップを有するフッ化物を用いることで、さらに短波長な領域での発光を得る研究を行っています。
 動作原理は電子源に電圧を印加して放出された電子を蛍光体に照射し、それにより蛍光体が励起されて得たエネルギーを光に変えて発光します(図1)。電子源としてカーボンナノファイバー(CNFs)を用いています。本研究室では蛍光体としてKMgF3薄膜を用いることで、真空紫外線領域での発光を得ることに成功しており(図2)、固体蛍光体を用いた発光素子では世界最短波長の発光を実現しました。さらにCNFsを電子源に用いることで、従来の光源である重水素ランプなどからの熱放射を防ぐ必要がなくなります。
 このような真空紫外線発光素子の開発は、更なる応用への第一歩になることが期待されます。